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一対多の組み手の経験はある。だが、怪力の熊族が相手方にいるのは厄介だ。他の3人は大したことはなさそうだが、束になればまぁまぁ邪魔になるかもだ。
さて、啖呵を切ってみたはいいが、どうしたものか。ていうか、桐ヶ谷を何とかしねぇと。意識失ったままってのはヤベェよな。
次の手を考えながら、開け放たれた扉の辺りにちらりと目をやる。そこで言葉を失った。
「やっほー」
いつの間にか戻ってきていたのか、刑事課長の柳が、視線の先で手を振っていた。
26.
「やぁ諸君、とっても楽しそうだね! 生憎、混ざりたいとは1ミリも思わないけど」
場違いなほどに朗らかな声と笑顔の柳に、戦意を挫かれた一同の視線が集まった。
「カメラ壊してくれたみたいだね。事故ならしょうがないけど、わざとなら弁償だよ。あ、壊してくれたの以外にも幾つかあるからね、この道場」
怒りのこもった唸り声など気にも留める様子はなく、柳は続ける。
「きみたち4人の処遇は追って伝えるよ。今日のところは帰りたまえ」
靴を脱ぎ、ストッキングの足で土足厳禁の道場の床に上がると、倒れたまま動かない桐ヶ谷の側まで歩み寄った。
さっきまでの威勢が嘘のように、4人は静かだった。
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