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所属する政治団体『真なる人の会』を通じ、大物政治家の子息である桐ヶ谷虹の世話役を買って出た彼は、さっそく歓迎の意を込め、アワミ・サンセットビューホテルの展望レストランに招待したのだった。
「今のは江戸時代の歌人、狩野冬寂の句ですね」
「ご存じでしたか。お話に聞いていた通り、たしかに聡明な方のようだ」
満足げに微笑む蘭堂に、桐ヶ谷は小さく頭を下げながら
「恐縮です。河都市への赴任が分かってから、大まかな地域情報を集めるついでに知っただけですから」
「いやいや。充分に教養がなければ、ローカルな文化にまで興味は及ばないものです。けれども、知っていれば、初対面どうしであっても話の種を用意することが出来る。こんな感じで。さすがは桐ヶ谷家のご子息だ」
自分を手放しに褒める蘭堂に、しかし桐ヶ谷はいささか表情を曇らせながらうつむき、頭を振り
「蘭堂先生。わたしは今でこそ桐ヶ谷の家に引き取られ、その姓を名乗らせていただいていますが──」
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