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「『天使の家』にいた頃から、とても聡明な方だとお聞きしています。それゆえに、桐ヶ谷弦一郎先生は、あなたを養子として迎えられた。あなたはその期待に背くことなく学業を修め、警察官僚としての道を邁進し、今こうしてこの場所にいる。そうでしょう?」
神妙な顔を崩さない青年に、蘭堂はさらに言葉を続ける。
「弦一郎先生はとても聡明な方で、生まれや血筋よりも個人の資質に重きを置かれる方とは有名な話です。人間なら誰しも、平等に機会を与えられるべきと先生は仰っています。あなたは後継者候補として選ばれた。謙遜などせず、もっと自身を誇示することは、あなたのみならず弦一郎先生のためにも必要ですよ」
『人間なら』のくだりを殊更に強調する蘭堂に、桐ヶ谷は口元にわずかなこわばりを残したまま笑みを浮かべ、小さく頷いた。
人間種の権利向上を掲げる『真なる人の会』は、獣人種をはじめとする亜人種──現在の世の中において、この呼称は差別的とみなされる──が社会の重要なポストを占めることに警鐘を鳴らし続けている。
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