鬼を伐つ隊

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 総見は昼近くに始まった。  義政を最上段に、教貫と晴海は庭近くの桟敷(さじき)に座った。  その席でも教貫は床几に座り、晴海は床に座った。  晴海は横目に教貫を見上げ舌打ちでもしたさそうな顔をしていた。  「御庭廻組一番隊でございます。」  そんな表情の晴海の顔など無視して、教貫は声を上げた。  先頭は村田善六、その後ろには同じ隊服を着た者達が居並んでいた。  「一番隊隊長、村田善六でございます。」  彼に続き、隊員が全て膝を折った。  「皆、衣を揃えてきたか。」  義政は頼もしそうにその隊を見た。  「本日より御庭廻組一番隊として、大殿様をお守り申し上げます。」  善六は朗々と言葉を発した。  その後ろに列(なら)ぶのは桂金吾兼嗣を筆頭とする猛者達。  その中で宝蔵院の坊胤嗣は窮屈そうに衣を着、鬼木元治はいかにも嫌悪の相を表していた。  しかし、義政は頼もしげにそれを見た。  「衣を揃え、いかにも頼もしく見えるぞ。」  そこに教貫の声がした。  白地の羽織に袖は紺、袴は深い紫に染まっている。  「この衣を見れば、上様にも安心して頂けるかと。」  そう言う善六の後ろで、  目立ち過ぎなんだよ・・鬼木元治がボソッと言った。  「その通り。」  その声を聞きつけた晴海が大声を上げた。  「御庭廻組はあくまで陰(かげ)。  その陰がそのように目立つ衣を着て何とする。」  晴海の一喝に村田善六は俯いた。  「黒衣を着なされ。なるべく目立たぬように・・その衣装は京見廻組にでもあげなされ。」  賞嘆の言葉を投げかけた教貫を晴海は睨んだ。  「二番隊・・・」  教貫は張りのない声で言った。  晴海が桟敷を降りる。  「拙僧は二番隊の主でもございます。  私が我が隊員を紹介いたします。」  何か言いたそうな教貫を咳払いで抑え、義政は頷いた。  「並木掃部ノ兵衛義貞。」  最初に兵衛の名が呼ばれた。  彼は筒袴を穿き、腰にはそれまでと違う太刀を帯びていた。  続いたのは陸奥の修験僧紅蓮坊。  長大な六尺棒がその僧が持つと短く見える。そしてその出で立ちは、御前試合の時と変わらず黒に真紅の炎をあしらった羽織を身に着けていた。  そこで晴海は一息をつき、  「国立清右衛門、並びに巴。」  華奢な男と女武者が現れた。  女と見まがうばかりの武者は真紅の大袴を穿き、白地の小袖の上には濃紺の羽織を纏っていた。  対する女武者は藍色に染まった綿の袴に白い道着といういたって簡素なものだった。  「我が隊は三つに分けます。」  晴海は朗々と声を上げる。  「諸国を歩くとなれば、二隊は必要。  その隊に華美な服装は無用。ありのままの姿で居らせています。  それを取り纏めるのが拙僧。それには二隊との連絡役として捨テ二郎を採用いたします。」  出し抜かれた・・教貫はそう感じた。  「そうか・・それではその方も儂の近くにいるが良い。  だが他に隊との連絡があれば素速く動くが良い。」  「将軍様には、我が隊の拡充をお許し下さるようお願い申し上げます。」  義政はそれに快諾を与えた。  が、  「大炊ノ介にも鬼からの護衛を付けることを忘れるでないぞ。」  と、釘を刺した。
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