殺人症候群

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「きゃあああ」  夕暮れ時、路地裏で少女の叫び声が響いた。  目の前には血を頭から浴びた様な男。少女はその男に命を助けられた。  廃工場には殺し屋がいるだの幽霊か住んでいるだの、様々なオカルトじみた噂が立っていた  肝試しで廃工場を訪れた2人の少女達は見てはいけない取り引き現場を見てしまった。  廃工場の噂の正体は、マフィアの取引現場。 人の少ない時間帯に最低限の人数で取引は行われていたが、偶然その人影を見た人が面白半分で噂を立てたのだった。  少女達はツイていなかった。たまたま取引の時間と同じタイミングで肝試しにきてしまったのだ。  それが幽霊などのオカルトではないと気づいた時にはすでに手遅れだった。すぐに捕らえられた少女達は手足を縛られ工場の隅に投げ捨てられてしまった。  しばらくして少女達を縛った男達が現れた。 「どうするこいつら。殺す?犯す?」  スキンヘッドの男はグラサンの男に話しかける。 「犯すって、てめえロリコンかよキッショッ」 「いやこれくらいならもうロリじゃねえだろ、なあお嬢ちゃん。年いくつだい?」  スキンヘッドの男は言いながら1人少女の口を塞いでいたガムテープを剥がした。 「だれか、誰か助けて!」  少女が叫ぶとスキンヘッドの男は少女の頬を思いっきり引っ叩いた。 「俺ぁ何歳って聞いたんだぜ。叫んでんじゃねえよクソが」  男は少女を殴り始めた。  やがて殴られていた少女は呻き声すら上げられなくなってしまった。 「ああ、死んじまった。まあ静かになったしいいか。」 「ついでに、そっちも殺しとけ。そうした方が運びやすい。」  グラサンの男はスキンヘッドの男へと指示を出す。 「チッ、勿体ねえ」  男は生きている少女へと歩み寄る。  その時だった。 「ぐはッ」  グラサンの男は腹を抑えて蹲って《うずくまって》いた。  何が起こったが分からないスキンヘッドの男は振り返り、グラサンの男がどうなったかを確認する。  刹那、スキンヘッドの男の腹部を強烈な痛みが襲った。 「ぐえッ」  スキンヘッドの男は胃酸と昼飯が混じった物を撒き散らしながら悶えている。 「よう、悪人ども。成敗しにきたぜ。」   少女に背中を向ける様に立っていた学ランの男は男達に向かって言い放った。 「ヒーロー、」   少女は思わず心の中で呟いた。  どうやらマフィア2人にダメージを与えたのはこの男の様だ。男は近くにいたスキンヘッドの方を片手で乱暴に起こす。 「うっわ、汚ねーっな」  学ランは呻るスキンヘッドの男を軽々と投げ飛ばした。  投げられたスキンヘッドの着地点にはグラサンの男。どしゃっという音とともに2人はもつれあい転がっていった。  学ランは転がっていった2人の上に飛び乗り声をかける。 「もしもーし、まだ生きてる。」  返事は無かった。  しかし2人にはまだ息があった様で、それを確認した学ランは満面の笑みを浮かべた。 「良かったー まだぐしゃぐしゃにしてないもんね」  学ランは2人を目掛けて全力で地団駄を踏んだ。  腹を踏み抜かれたグラサンは口から内臓を吐き出し、顔を踏み抜かれたグラサンの眼玉は少女の元まで転がってきていた。 「っ、」  少女は恐怖で血の気が引き、その顔は死体の様に白くなっている。  しばらくして学ランの動きが止まる。 「ふぅーっ 疲れた。」  大きな血溜まりの真ん中で学ランは一仕事終えたサラリーマンのように伸びをしていた。 「あっ、そうえば」  学ランは振り返り少女の方へとよって来て口を塞いでいたガムテープを剥がした。 「あ、ありがとう。」  怯えた様子で少女は伝えた。 「? 何が?」    学ランは首を傾げながらも少女を縛っている縄を解く。 「た、助けてくれて」 「なんのこと?」  学ランはやはり首を傾げる。 「ああ、あいつらを殺したこと?」  少女は小さく頷く。 「成る程、君はあいつらに捕まってたんだ」  少女は嫌な予感を感じ取った。 「あいつら殺すのに夢中で気がつかなかった」  少女はこの学ランの少年が自分を助けてくれた訳ではないことを理解した。 「はいっ、これで君は自由だ。」  少女は一目散に逃げ出した。 「ハハッ、息の良いデザートだ♪」  学ランは少女がある程度離れたのを確認してから走り出した•••    後日、廃工場では4つ?の死体が発見された。  その内の3つが人の形を保ってはいなかった。  警察ではマフィアの諍いに2人の少女が巻き込まれたという判断を取りその事件は幕を引いた  かの様に思えた。  その事件を発端に、全国で指名手配犯やマフィアの構成員が相次いで死体で発見されたのだ。  世間ではそれらの事件は同一犯の犯行とされており、被害者のほとんどが悪人であったためダークヒーローの登場と騒ぐ人々が一定数いた   「次は誰を殺そうかな」  夜の埠頭。学ランの少年は、潮風に向羽様に立ちながら1人海を見ながら笑っていた。
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