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「夏菜、好きだ」
好きですか。そうですか。
って。
えっ?
「いま、なんて……」
ぽかんとあいた口が動かせない。
「……俺と付き合ってほしい」
愛しい顔をちょっとだけ横に向けて。
少しだけ赤らめた顔で声を振り絞って。
その愛らしさにこっちまで熱くなって。
「うん」
そうつぶやいて、私はよりかかって。
触れた啓太の身体は、固いけど心地よくて。
もっと触れていたくて。
両手をぐるっとまわす。
男の人の身体って大きいな。
ピピピピピピピピ。
テレビの横に置いてあった時計が突然鳴りはじめる。
2人だけで満たされた空間を、空気を読まない音が裂く。
うるさいなあ。
せっかくいいところなのに。この時間を奪わないで欲しい。
それに。
まだまだ足りないと、私の身体が欲している。
「ごめん、セットしたままだった」
目覚まし時計を止めに行こうとする啓太の身体をギュッと掴む。
「だめ」
逃げていかないよう身体を深く預ける。
「あと5分だけ、このままで」
啓太も抱きしめてくる。
頬が胸板にくっついて、鼻先をくすぐる心地よい匂い。
「5分だけでいいの?」
「……延長したい」
チラッと啓太を見ると、ピタッと目があって。
一瞬で唇を重ねて。
「じゃあ、明日の朝まで」
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