延長したい、今夜。

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「?」 下を向いたまま、ずっと黙っている。 「どうしたの?」 手を膝の上で組んでじっとしている啓太をみて、胸に不安が襲ってきた。 半ば強引に泊まったりして悪かったかな。 もしかしたら、ほんとうは彼女がいて迷惑だったんじゃ……。 「あのさ」 びくっとする私。 ゆっくりと顔をあげる啓太。 「夏菜は……彼氏がいるの?」 へっ? 急な展開に頭が追いつかない。 今になって、朝になって聞くの? いや、そうじゃない。 もしかして、もしかして告白の前の最終確認ってやつかな。 「……いないよ」 首根っこを押さえつつ姿勢を正して啓太の方を向く。 「そう」 表情に安堵が宿った気がした。 これは、もしや……。 「……啓太は?」 問いかけに、返事はない。 ねえ。 いないって言ってよ。 無言のまま再び下を向く啓太。 早く言ってよ。 今日も暑いのだろう。天井のエアコンがうーうーと唸りをあげている。 お願いだから、早く。 顔を上げた啓太の口がゆっくりと開こうとした。 「…い」 だめ、もう我慢できない。
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