延長したい、今夜。

14/14
前へ
/14ページ
次へ
「夏菜、好きだ」 好きですか。そうですか。 って。 えっ? 「いま、なんて……」 ぽかんとあいた口が動かせない。 「……俺と付き合ってほしい」 愛しい顔をちょっとだけ横に向けて。 少しだけ赤らめた顔で声を振り絞って。 その愛らしさにこっちまで熱くなって。 「うん」 そうつぶやいて、私はよりかかって。 触れた啓太の身体は、固いけど心地よくて。 もっと触れていたくて。 両手をぐるっとまわす。 男の人の身体って大きいな。 ピピピピピピピピ。 テレビの横に置いてあった時計が突然鳴りはじめる。 2人だけで満たされた空間を、空気を読まない音が裂く。 うるさいなあ。 せっかくいいところなのに。この時間を奪わないで欲しい。 それに。 まだまだ足りないと、私の身体が欲している。 「ごめん、セットしたままだった」 目覚まし時計を止めに行こうとする啓太の身体をギュッと掴む。 「だめ」 逃げていかないよう身体を深く預ける。 「あと5分だけ、このままで」 啓太も抱きしめてくる。 頬が胸板にくっついて、鼻先をくすぐる心地よい匂い。 「5分だけでいいの?」 「……延長したい」 チラッと啓太を見ると、ピタッと目があって。 一瞬で唇を重ねて。 「じゃあ、明日の朝まで」
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

85人が本棚に入れています
本棚に追加