延長したい、今夜。

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「啓太がいいなら、もう少し飲みたいけど」 「夏菜がいいなら、つきあうよ」 「やったー」 ピンポーン、と呼び鈴を押す。 「じゃあ、生追加で」 「もう生何杯飲んでんだよ。夏菜はほんとお酒に強いなあ・・・。僕はハイボールで」 注文する啓太の顔をじーっと眺めていた。 「なに? どうしたの?」 「いやー、啓太ってお酒飲むと顔が赤くなるなあって」 ほんのりと赤くなっているのが、またかわいい。 「夏菜は全く変わらないなあ」 お酒を飲めば酔いはするんだけど、顔には出ないんだよな。 得なのか損なのかはわからないけど。 「……でさ、ほんとはもっとしっかりしてほしいんだよね、先輩には」 話し続ける私に、啓太が壁にかけてある時計を指差した。 「終電5分前になったよ」 いつの間にこんな時間。 早いなあ。 2人が帰ってから2人で2時間も飲んでる。 「ごめん、お手洗い行ってきていい?」 「うん」 立ち上がろうとしたら、姿勢がぐらっとなって転びそうになった。 「ちょっと飲みすぎやない?」 「大丈夫大丈夫。へーきへーき」 おぼつかない足取りと脳みそをごまかしてトイレへと向かう。 ガチャン。 「……ふう」 扉を閉じ便器に腰かけて深呼吸する。 落ち着け。落ち着け。落ち着くんだ、私。 胸の動悸を理性で抑えようとするも、なかなか止まらない。 左腕にはめた時計が1つずつ時間を刻んでいく。 よし。 両手でパンパンと頬を叩き立ち上がる。 今日こそ、啓太に好きって言ってもらうんだ。
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