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「ふたり付き合っちゃいなよ」
先週の水曜日の昼。
口に含んだレモンティーを吹き出しそうになる。
「好きなんでしょ? 啓太のこと」
奈美は頬杖を付いて、小皿に盛ってあるポテトをつまんでひょいっと口に放り込む。
「そうだけど……」
ハンカチで口元を吹くそぶりで丸ごと隠す。
答えは言わなくても顔に自然に出てるだろうから。
「友達の期間が、長いし」
私と奈美、啓太、宗介は、大学の同じ学部の同級生で、1年生の頃からなんとなく4人で集まっていた。
大学を卒業し3年近くたった今も、4人で月一回くらいは集まる仲だ。
そのうえ私と奈美は職場が近く、毎週水曜日には一緒にランチするようにしている。
「もし、告って振られたりしたら、なんか大変じゃん?」
4人の関係は今も良好だし、心地よい。
私の気持ちの拠り所を、自ら壊すようなことはしたくない。
ストローを通って流れてくるレモンティーが、いつもより酸っぱく感じる。
「大丈夫じゃない? 現に私たちだってひょっとしたらそんなことがあるかもしれないし」
「え、なんかあったの?」
「ちがうちがう。たとえ話。仮に宗介と別れたとしても、4人の仲は変わらないと思うし」
「そうかなあ」
卒業前から付き合い出した宗介と奈美の関係は、数年たった今もあの頃と変わらずだ。
近いうちに、タキシード姿の宗介とドレス姿の奈美を眺めることになるだろう。
付き合ったばかりの頃、照れる二人を啓太といじっていたのが懐かしい。
「それに……」
「それに?」
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