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「はあー楽しかった。満足、満足」
「結局延長して2時間とか、頑張ったな」
「食べたの全部消化したかも」
「それはさすがにないんじゃ」
カラオケ店を出て、啓太と並んで大通り沿いの道を歩く。
午前3時近くになるとさすがに人の影も声も薄まっている。数台のタクシーが空いている路上を猛スピードで通り過ぎていく。
道沿いに並んでいる屋台も、ぽつぽつと閉店作業をはじめ、2人で飲んだ後によく行っている屋台も既に撤収していた。
「タクシー止めようか?」
と啓太。
「うん。そうする」
いつもなら、ほんといつもなら、そう言って左手を上げてタクシーに滑り込む。
だけど、今日はそうはいかない。
ちょっと眠くなってきたけれど、そうはいかない。
ぎゅっと啓太のシャツの裾をつまんでみる。
「どうしたの?」
びくっと啓太が立ち止まる。
「……」
ゆっくりと溜めをつくってから顔をあげ、啓太の顔を覗き込むようにつぶやいた。
「今日はまだ……足りないの」
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