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「ふたり付き合っちゃいなよ」
隣に座る啓太が口に含んだビールを吹き出しそうになる。
「二人で結構飲みに行ったりしてるんでしょ?」
私の向かい側に座っている奈美が、頬杖をつきながら聞いてくる。
「そうだけど……」
手元にあるビールのジョッキを傾ける。
何杯目だろう。
啓太とは二人で今週水曜日に飲みに行ってたし、先週の土曜も飲んだ。
先々週は一緒に映画も見に行った。
その前は……志賀島までドライブしたっけ。
チラッと啓太を見ると、ピタッと目があって。
一瞬で瞳をそらされて。
私のこと、ほんとのところどう思ってるの?
「じゃあ、俺らは先に帰るから」
奈美の隣に座る宗介が立ち上がり、続いて奈美も腰を上げた。
「えっ」
「俺たちの分、ちょっと多めに出しとくから」
「あとはお2人で♡」
「おい、ちょっと!」
1万円を置いて、宗介と奈美は足早に店を出ていった。
「……どうする?」
どうするって、付き合うのか、まだ飲むのか、どっちだろう。
日本の転換期を生きた福沢諭吉も、ことの成り行きを見守っている。
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