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オレの名前は岬サキ。
ヘルズクラウン3代目総長やらせてもらってる。
ヘルズクラウンは日本のレディースの中じゃちょっとしたもんなんだ。
総長のオレは物心ついた頃から殴り合いの喧嘩じゃ誰にも負けたことはねぇ。もちろん男にだって負けやしねぇ。
オレはその日レディースの集会が終わった後一人で愛車のカワサキZ2に乗って街を流していた。自慢の赤い長髪と特攻服の袖が風に揺られる。
すると、目の前から対向車線を走っていたトラックが車線をはみ出して一直線にオレの方に向かって来やがった。
「チッッ!!何してやがんだよ!!」
舌打ちしながらハンドルを左へ切ると何とか正面衝突は免れたもののタイヤが滑って転倒しちまった。
ドンカラガッシャーン!!
Z2が派手にブッ壊れる音が耳に響きやがる。
……アレ?体に力が入んねーぞ?それに何か頭から血ぃ出てねぇか?
……やべぇ。段々目の前が真っ暗に………………。
コレ……オレ死んだんじゃねぇのかよ…………。
チックショー……が…………………………………………。
◆ ◆ ◆ ◆
……………………………………………………………。
…………………………………………。
ペチペチペチ。
ペチペチペチ。
ドガッッ!!
「……ってぇな、オラァ!!ってあれ?」
オレが目を開けると目の前には見たこともねぇ景色が広がってやがる。
真っ白な空間に下からはスモークでも焚いてんのか、モクモクと煙が吹き出してる。
んで空は一体どうなってんのか知らねーが、金色にビカビカ輝いてやがる。
「よっ!!お疲れ!」
んでオレの真正面にはヌイグルミのワンコみてーなのが何か喋ってんな……。操縦者どこだよ。あんまふざけてっとブッ飛ばすぞ。
「あのねー。僕は誰かに動かされてる訳じゃないんだよ?」
あー、ハイハイ。そういうウザいのマジ要らねぇから。
「ウザイって酷くない?君は事故で不幸にも死んじゃったんだよ。それで今度は違う世界で頑張ってもらおうって事で異世界に転生させる事が会議で決まっちゃってさー。僕がその案内を勤めることになったって訳。」
「……はあ?テメェなにフカシこいてんだよ!!いい加減温厚なオレも切れるぜ?」
「はあ…………。…………もういいや。それじゃ、て~んせ~~い!!」
ヌイグルミが声をあげると白い空間が瞬間真っ暗になりやがった。
……………………えっ?ここどこだよ………。
一瞬でオレとヌイグルミは荒れ果てた荒野に立っていた。
「これでわかったかな?とりあえず君にはこの世界をチャチャッと救ってもらうから。あっ、ちなみに敵は悪の秘密結社ね。ほら特撮とかで出てくるようなさ。」
何じゃッッソリャ!!
◆ ◆ ◆ ◆
「とりあえずこれを渡しておくよ。」
ワンコのヌイグルミがオレに一本の木刀を差し出した。
「僕はワンコじゃなくってとらびすっていう名前だから。ちゃんとそう呼んでよね。それでこれは決して折れることがない魔法の木刀だよ。君が持つ武器といったらこれなんかが丁度いいだろう?」
「……決して折れることがない……?じゃあ刃物とかでも?」
「もちろん切れないよ!例えダンプに轢かれてもだいじょうV!!」
しげしげと右手の中の黒い木刀を眺める。
「あと君には異世界に転生することで新たな能力が芽生えてるから。名付けて燃えシステム。君がヒートアップすればするほど君の能力値が全体的に底上げされるよ。これも君にピッタリな能力だと思うなー。試しにそこにある岩でも割ってみなよ。心が燃えてれば余裕で割れる筈だからさ。」
そんな気楽に言われてもほんとに割れんのかよこんなデカイ岩とか。
まっ、物は試しだな。
「よしっっ!!おらぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
その時どこからともなくこんな音声が聞こえた。
「あなたの燃え値が200ポイントアップしました。能力補正+100発動。」
オレは両手に握りしめた黒い木刀で力一杯目の前の3m位あるデカイ岩をぶん殴った!
バッコーーーーン!!バラバラバラバラ……。
すると巨岩は派手な音を立てて粉々に砕け散った。粉塵が束の間巻き上がる。
「ヒョーーーー!!スッゲェじゃん!コレ!」
改めて手の中の木刀を見る。
「だから岩が割れたのはあくまで君の燃え値による能力アップのお・か・げ。その木刀はただ耐久性に優れてるだけだから。別に攻撃力的には滅茶苦茶凄いとかじゃないから。ほら君の世界でも象に踏まれても割れない文房具とかあるでしょ?あんな感じだから。」
「そうなのか……?」
「……君僕の話あんまりよく聞いてなかったでしょ!まあ追々分かればいいけどさー。」
………こうしてオレは嫌々ながらも異世界で悪の秘密結社相手にブッこみ始めることになってしまった。果たしてどうなることやら……。
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