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5分早く帰ったのに、また例の男に会ってしまった。
他に家に帰る道はない。
ずっと待ち伏せしてたのだろう。
私以外の女じゃダメなの?
赤の他人の死を願う私は、ひどい人間だろうか。
神様が『あと5分』という願いだけは叶えてくれたのだとしても。
さすがにひどい。
まるで同じことの繰り返しだ。
何度走っても、焦って道を間違え、また神社の前だ。
階段を上りきると、あの男が一段下にいるのが見えた。
私の方が上の段にいる。こうなったらいちかばちかだ。
「このゴミ野郎が」
持っている鞄を思いっきり男の頭にぶつける。
ごふっっと鈍い音がして、男が階段から逆さに落ちていく。
男の頭が地面に当たった音も聞かぬまに、私は元来た道を走り出した。
明日になったら逆に私が殺人犯に?
だけど、今はそんなことどうでもいい。
あと5分を有効に使った私は助かったんだ。
ありがとう。神様。
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