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あと5分早く帰っていたら、こんなことにはならなかったのに。
仕事帰りの真っ暗な夜道を、私はひたすら走っていた。
通りすがりに出会った、知らない男に追いかけられていた。
にやりと冷たい目をした男だ。
目が合った時にはもう遅かった。
男は右手にバタフライナイフを持っていた。
私はとっさに走り出していた。
気付いたら神社の前まで来ていた。
どうしてわざわざこんな人気のないところに来てしまったんだろう。
自殺行為でしかないのに。
神に仕える場所なはずなのに、私の元には神など来ない。
神社の中は行き止まりだ。他の入口などない。
階段の前で息を切らした私の腕を、男がつかむ。
痛みも感じなかった。
すぐに自分の胸から滴り落ちるを血を、ただ黙って見ているまま、意識をなくした。
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