お母さんにカレーを

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お母さんにカレーを

よつばは小学二年生の女の子で、お母さんとお父さんと一緒に暮らしています。 お父さんは仕事で夜まで働き、お母さんは家事をしています。お母さんは料理が得意で、特にカレーが美味しくて、よつばはカレーが出る日が楽しみでした。 ある日の夕飯はカレーで、よつばはあまりの美味しさにあっという間に食べきってしまいました。 「ごちそうさま!」 「よく食べるな、よつばは」 お父さんが感心したように言いました。よつばはお母さんのカレーが本当に好きだからです。 今ので二杯目です。 「だって美味しいんだもん、お母さんのカレーは世界一だよ」 「おかわりする?」 「うん!」 お母さんに空の皿を渡しました。ご飯をよそっている時のお母さんは楽しそうでした。 よつばの言葉が嬉しかったのです。 「はい、よく噛んで食べるのよ」 「分かってるよ」 カレーを盛られた皿を見て、我慢できずよつばはカレーを食べ始めました。 それから二週間後の土曜日の朝のことでした。お母さんが朝食の準備をしている時に、よつばはお父さんとリビングで話をしていました。 「お父さん、明日はお母さんの誕生日だからお母さんにカレーを作ってあげたいな」 よつばは言いました。お母さんの誕生日には毎年プレゼントをあげていますが、今年はカレーを作りたいと思っているのです。 毎日美味しい食事を作ってくれるお母さんに感謝の気持ちを現したいのです。 「おお、それは良いアイデアだね、お母さん喜ぶね」 「だからお父さんにもカレー作りを手伝って欲しいの」 よつばはお父さんにお願いしました。よつばはお母さんの手伝いで具材を切ることはできますが、火を扱うことは難しいです。 お父さんにはカレーの仕上げをして欲しいのです。お父さんは普段家事はお母さんに任せきりですが、料理はできるのです。 お父さんが作った野菜炒めは美味しかったです。 「分かった。そういう事ならお父さんは協力するよ、まずはお母さんにも言わないとな」 お父さんは言いました。お母さんの許可なしに、キッチンを使う訳にはいかないからです。 その時でした。スクランブルエッグとコーヒーを手に持ったお母さんがリビングに来ました。 「ねえ、お母さん、明日なんだけど私とお父さんでカレーを作りたいんだけど、良いかな」 「良いわよ」 お母さんは朗らかに言いました。 よつばは明日が楽しみで仕方ありませんでした。 次の日の夕方、エプロンを身につけたよつばとお父さんはキッチンでカレー作りを始めました。 野菜の皮をよつばとお父さんと一緒にむき、次によつばがにんじん、じゃがいも、玉ねぎ肉を切ります。 「上手に切れたな」 お父さんはよつばが切った野菜と肉を見て誉めました。 「ここからはお父さんがやるから、見てるんだぞ」 「分かった」 お父さんはよつばが切った肉を鍋に入れ、炒めました。しばらく炒めていると肉に色が付き始めました。 そして野菜を入れました。 「玉ねぎがきつね色になってきたね」 「これくらい炒めるとカレーが一層美味しくなるんだよ」 お父さんは言うと、水を入れて鍋に蓋をしました。 「二十分煮れば野菜と肉が柔らかくなるから」 「カレーを作るのも大変なんだね」 よつばは言いました。カレーを作るだけでも、野菜や肉を切ったり、鍋に入れて煮込むなどやる事が多いからです。 よつばは手伝いで部分的な所しかやらないので、今日のように一からカレーを作ったのは初めてです。 「そうだな、料理を毎日作っているお母さんは凄いな」 「本当だね」 よつばは言いました。 夕飯の時になり、よつばがご飯を、お父さんはカレーをよそりました。 「はい、お母さん」 よつばは皿をお母さんの前に置きました。 「まあ、美味しそう」 「私が野菜や肉を切って、後はお父さんにやってもらったけどね、冷めない内に食べてね」 よつばは言いました。お母さんはいただきます。と一言言うと、スプーンでカレーをすくって口に入れました。 よつばはお母さんを見て胸がどきどきしました。 「どう……かな?」 よつばは恐る恐る聞きました。 「とても美味しいわ、素敵なプレゼントを有難う」 お母さんは最高の笑顔で答えました。 よつばはお母さんのためにカレーを作って良かったと思いました。
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