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普通であって、普通ではない
誰かに恋をするとはどんな感覚なんだろう。そんなことをふと考える時がある。
それなりに歳を重ねれば、誰しもが芽生え始めるという恋心というものとは一体何なんだろうか。
恋と言われて、思いつくことといえば、胸が高鳴るとか、心臓が締め付けられるように痛むとか、その人のことを考えると夜も眠れない。なんてことがよく表現方法としてあげられる。きっと、どれも恋なんだと思う。もちろん、病気という考えも捨てきれないが、今はそんな場違いな考えは捨てよう。
俺もこれまで、それが恋ということに気がつかなかった。でも、これはきっと恋なんだと思う。なぜかと聞かれると、正直分からない。でも、さっき言った通り、その人のことを考えると胸が高鳴るし、心臓も締め付けられる……。ってほどでもないけど、たまにキュッとなる時がある。夜は……、まぁ、眠れない日もある。
俺は生まれてこのかた、恋をしたことがない。でも、俺は彼女のことが好きで、彼女のそばにいたいと思う。だから、俺は今日彼女に告白する。
正直この恋が結ばれるかは分からない。自分で言うのもあれだが多少頭はいいはず。ただ運動神経は普通だし、見た目も可もなく不可もない。だいたいそんな感じだと思う。でも、彼女とは誰よりも長く一緒にいたし、なんなら、常に一緒にいると言っても過言ではない。それくらいに俺と彼女との距離は近い。だから、この恋は結ばれると思う。
一つの点を除いては……。
それでも今日、彼女に告白する。
成功するイメージなんて想像できない。そもそもできるやつなんているのか? いや、今はどうでもいい。
桜舞う中、彼女に俺は告げる。俺の精一杯の気持ちを。
「ユメのことが好きだ。俺の彼女になってくれ!」
俺の真剣な眼差しに対して、彼女の目はいつものような、特に緊張しているわけでも、嬉しそうでも、嫌そうな目でもない。ただ、いつものように俺のことを見つめて、俺の告白に対して返事を返す。
「森本叶汰森本叶汰さん」
「は、はい……」
「無理です」
「えっ……」
舞い落ちていく桜が俺たちの前を次から次へと通っていく。そして、その光景が滲んでいくのを俺は感じて、気がつくと、自分が自室のベッドで寝ていることに気がつく。
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