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「それで、そこまで叶汰のことを思ってくれている人なのになんでフラれたんだ?」
「う〜ん。分かるような、分かんないような……」
「ちなみになんて言われてフラれたんだ?」
「俺が付き合ってくださいって言ったら、無理ですって」
「それはまた、冷たいな……」
「まぁな……」
晴人にそう諭されて、俺はあの時の記憶を思い出して、少し身震いをしてしまう。そこまで大きなものとは考えていなかったが、いざ、それを表に出してみるとその想いの大きさにびっくりしてしまう。ましてや、二日連続悪夢のようにして俺の夢の中に出てくるのだから。
「それで、誰なんだよ。その相手って」
今まで以上に俺に近づいてきて、ほれほれと言わんばかりに耳元に手を当てて、俺の方に近づいてくる。晴人的なりの周りに知られないような配慮なんだろう。
そんな晴人に御構い無しに俺は、普通の声のトーンで答える。
「ユメだよ」
「は?」
「え?」
先程までのこちらをおちょくるような笑みは消え、いきなり無表情になってしまう晴人。
「いや、すまん。叶汰、お前今、ユメって言った?」
「そうだけど?」
俺の答えに、頭をポリポリと掻きながら、俺にもう一度といてくる。
「えっと、寝るときに見る夢じゃないよな?」
「何言ってんだ?」
今日の俺にそのツッコミはやめてほしい。かなり心に響く。
そして、俺の言葉にまだ納得がいっていない晴人が今度は耳ではなく、ぐっと顔をそのまま近づけてくる。
「ユメってたしか、叶汰の家にいるアンドロイドのことだよな?」
「そうだよ。晴人も前に会ったことあるだろ」
「なるほどな……」
俺の答えを聞いて、自分の席に深く腰掛けて、右手を顎に持っていって考える仕草を見せる晴人。
「あんまり、こんなことは言いたくないが叶汰」
「なんだよ」
「アンドロイドに恋するっておかしくないか?」
「そうか?」
「あぁ」
俺は晴人の言うことがあまり理解できない。もちろん、晴人が何を言いたいかはわかる。だが、それがそうなんだと、その通りだと解釈することができない。納得できなかったのだ。
例えば、科学の実験でこの世の始まりはビックバンが起きたと書かれていても、なんで、何もないところでそんなことが起きたのかと疑問に思うのと同じようなことだ。科学的に言えば、確かにビックバンが起こったからこの世界ができたのかもしれないが、それが全てではないと思う。神様が作ったとという考えもあるわけだし、なんなら、そもそもこの世界というものがもともと存在していたという考えもなんらおかしくない。
少し人より少し捻くれているのかもしれないが、どうしても晴人の言うことがうまく理解できなかった。そうなんだろうなとは思いつつも、なぜそう思うのか、その理屈が分からないと言った感じだろうか。
その時、教室のドアが開き、担任の先生が入ってくる。それは去年も俺と晴人の担任だった先生だった。
「話はまたな」
「分かったよ」
「あともう一つ」
教卓の前に立つ先生の方を見ようとする俺を途中で引き止め、晴人は続ける。
「園上には言ったのか?」
「いや、奈々実には言ってないけど」
「じゃあ、絶対にこのことは言うな。いいな?」
「あぁ。分かった」
日直の号令とともに俺たちは立ち上がる。そしてまもなくして礼と言う言葉とともに、朝のHRが始まった。
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