確認してると思いますが

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 冷凍食品やアイスクリームが入っている冷凍庫からの冷気に僅かに体が震える。そのままポテトチップスやチョコレートが並んでいる棚を進んでいった。徐々に騒がしい声が聞こえてきて、食品売場から日用品売場へ移動する。入り口には客が集まっており、その視線の先には『例の商品』を置いていた棚があった。水沢が客を縫うように棚の前に行くと、壮年の男と小太りの女が立っている。 「お前が店長か」  ブルドッグのような深いシワから鋭い瞳がのぞいた。水沢はいつものように営業スマイルを浮かべる。 「私はアルバイトを統括してる者ですが」 「まぁ、どうでもいい。ここの商品はもうないのか」  男がつばを飛ばしながら問いかける。氷見は思わず水沢の後ろに下がり、手で払った。男の言った通り、棚の両隣はきちんと品物が並べられているが、中央だけ空になっていた。 「ご確認いただければ分かると思いますが、貼り紙に書いてある通り現在品切れ中となっております」  水沢が空いた棚の奥にいくつも貼ってある紙を手で指した。そこには『現在品切れ中 入荷未定』と書かれている。 「ものが来るのはいつだい? 在庫隠してるんじゃないだろうね」  さらに小太りの女が詰め寄ってくる。 「滅相もない。バックヤードは狭いので商品は届き次第、棚に並べさせていただいております。そもそも発注をかけても、いつ届くのが不確定でトラックが来る時間も分かりません」
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