確認してると思いますが

3/5
前へ
/5ページ
次へ
 水沢が首を振ると、小太りの女は彼の手に小さな紙を押しつけた。水沢が手を広げると、折れ曲がった駐車券だった。 「なら、待ってるから無料にしなさいよ」  一瞬、柱にかけてある時計に目をやると、水沢は渡された駐車券を手で挟む。 「ご確認いただいたかと思いますが、外の看板に書かれている通り、お品物を購入していただかないといけません。また、ご購入いただいても2時間までとなっております」  折れた駐車券にアイロンをかけるように手で伸ばした。そして、シワが残ったままの駐車券を女に突き返した。すかさず男が強引に引っ張って奪う。 「なんだその態度は、お客様は神様だろうが」  今にも一触即発しそうな雰囲気に氷見は息を飲んだ。しかし、水沢は微笑みを崩さない。 「では確認ですが、宗教はどちらになりますでしょうか? 仏教、キリスト教・・・・・・はたまた空飛ぶスパゲッティモンスター教とか?」 「さっきからふざけたことばかりしやがって!」  怒鳴り声を上げ男は水沢の胸ぐらをつかんだ。周囲のざわつきは一層大きくなり、後ろから見ていた氷見は見回す。 「ど、どうしよう」  遠くのレジにいるバイトに目線を送るも我関せずとばかりに淡々とバーコードを読み取っていた。周りが騒然とする中、水沢は話を続ける。 「お客様ならすでに確認されてると思いますが、最近他店で万引きがあったらしく、その関係であれの台数を増やしたんですよ」
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加