傘の下

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 映画を見終えて、映画館の出口から外を見ると、雨が降っていた。 「あー……」やっぱりか、と思いながら傘を広げる。俺は、ちらりと一緒にきていた高校の同級生、(とおる)のほうを見た。彼は案の定、傘など持っていなかった。 「えーまじで? 降るって言ってた?」徹はのんきに言う。 「言ってたって」天気予報で、ということなら今朝の予報で言ってたよ。俺は心の中で答える。 「善晴(よしはる)、言ってよー!」  数時間前に「傘なんている?」って言ったお前に答えて言ったよ。俺はさらに心の中で答えた。  映画を観る前から、こうなったらどうしようかとは思っていた。俺は傘を持ってる。徹は持ってない。雨が降ったら、相合傘になってしまう可能性がある、と。  普通の男友達なら問題ないだろう。周りの奴だって平気でしている奴もいる。ただ俺は…事情が少し違っていて……つまり……。  俺は、徹のことが好きなのだ。
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