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僕は琴美ちゃんの言葉の意味が分からなかった。言ってることの意味が分からない。合格しても行かないとは、いつのこと?なんのこと?分からないので僕は聞いた。
「え?行かないって?」
「この学校に行かないわ」
「え?何言ってるの?」
「私は合格しても、この学校には進学しないといってるの」
「え?えっと……え?」
ど、どいうこと……?
僕は今なんて言われたの?
琴美ちゃんは何を言っているの……!?
とんでもない事を言ったよね!?
違う、聞き間違いか?
「言葉間違ってない?」
「間違ってない。本気」
「緊張を和らげるための冗談?」
「冗談なんて今言わない」
そうだ、琴美ちゃんは冗談を言うような人ではない……じゃあなんで!?
行かないって何?それはどういう意味なの?急にどうしたの……!?僕達、この学校に進学するために毎日毎日……あんなに勉強頑張ったよね?将来の為に遊ぶ時間も削ってまで必死に頑張ったんだよね?
全国の中でもトップレベルのこの高校に合格して、辞退するという事!?そんなこと……ありえないよね……?聞き間違いかな……?聞き間違いだよね?そうだよね?
そう……だよ……ね……?
「私は行きたくないの、こんな学校」
琴美ちゃんは僕の疑いの願いを壊して、刺すように、とんでもない言葉を投げてくる。
もう、聞き間違いではないようだ。聞き間違いには出来ないようだ。
琴美ちゃんの言葉を飲み込んで、凄まじい衝撃が僕を突き刺しにくる。
そして、頭の中は混乱し始め、合格発表の緊張は気がつけば無くなっていた。僕は琴美ちゃんの言葉で思考がいっぱいいっぱいになる。
「ねぇ、悠斗くんはこの学校に入れば幸せになれると思うの?」
そんなぐるぐるの僕に、琴美ちゃんは不思議な質問をしてきた。だから、僕は当たり前に答える。
「そりゃ、そうだよ。このレベルの高い進学校で、沢山勉強をして、難関大学に合格できて……そしたら、良い会社に行けて、良い人生が待っているって……」
「それは誰が言ったの?」
「え?」
「誰がそんなこと言ったの?」
「誰って……」
「お母さん?お父さん?」
「……」
僕は黙ってしまう。
「ねぇ、良い高校、良い大学……良い会社……それが私の〝良い人生〟……?」
琴美ちゃんは急に怖い顔になった。今まで見た事もないような力強い眼差しで、僕に訴えてくる。冬の冷たさを眼で割いてしまいそうだ。
「ち、違うの……?」
僕は訳も分からないまま返答し、まだ混乱していた。今の話の何が間違っているんだ?
「違うわ、それは親にとっての〝良い人生〟よ」
「もし、それを信じて進んで……私は本当に幸せになれるのかしら?」
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