荊棘

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吊し上げにされる人物は、さまざまである。 これまでに、多くの者が吊し上げの刑をくだされたが、これは、刑法では検挙できない罰に対して行ったものである。今まで見逃されていた罪を見つめ直し、二度と同じ犯罪が起きないように、注意を促すためだ。 そして、それは大変に厳しい罰となった。他人を(おとしい)れる、ということは、それだけリスクがある、ということである。 処刑に値する者は、全て七様の独断により決められる。ただ無作為に決めるのではない。誰もが通信システムを使って、訴えることができるようになっている。 また、目安箱のようなものが各地に設置されており、その内容を基に調査に入る。訴えられた者は、一年の間秘密裏にその者の全てを調べ上げ、潜入捜査も行われる。その実態は謎である。 私は、編纂部として、たくさんの罪と向き合ってきたが、七様は偉大であった。だからこそ、皆誰もが、崇めるように見つめていたのだろう。厳しく裁いてきたのは、……いや、言うまでもないであろう。 久しぶりにこの編著を開いた。七様はこんなにもたくさんの人たちと向き合い、罪と罰の狭間に立って統率してこられた。私なぞには到底出来かねる重責を抱えていらっしゃったのではなかろうか。しかし、全くそのような素振りは見せず、気丈に振る舞っておられた。 私は、 少しずつページをめくりながら、その時のことを思い出していた。
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