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「なぜリキトは俺を食べぬ」
プリンは冷蔵庫の中で声を荒げた。
恐る恐る、チューブしょうがが言った。
「リキト様はご乱心にあられます」
卵も口々に声を揃えて言った。
「リキト様はイヤイヤ期です」
「お母様は、『プリンは夕飯の後に』と約束の上、購入された」
「しかしリキト様はスーパーの駐車場で、よりにもよって手掴みで貴方を食べると大暴れなされた」
「お母様は『プリンは駐車場では食べられない』とお言いになられた」
「癇癪の後、キッズアニメーションを堪能されたリキト様は、貴方の存在を大いに忘れました」
「それは育児疲れのお母様もです」
「お母様が貴方をお忘れになられたから」
知ったことか! プリンは怒りで体をプルプル震わせた。乳白色のプラスチック容器の中に包まれたその体は、まるでカラメルとカスタードが一体化するかのようだった。
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