食せプリン

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 玉子達は頷いた。  それは玉子ポケットの隣の隙間の、忘れ去られた寿司のおまけのワサビたちも同じ気持ちだった。  多少賞味期限や消費期限が過ぎたって死ぬわけではない、それは食す人間にとっても、また食される食材達も同じであった。  そしてそれはプリンにも同じであった。だが、だからこそ、プリンはそれを認めることが出来なかった。 「そこに居られる牛乳、スライスチーズ、本当にそう思われるか」 乳製品達は、声をかけられ気まずそうに身を寄せた。 「我々は確かに、多少賞味期限を過ぎても死ぬことはない。だがそれは、健康な成人にとっての当たり前だ。果たしてそれは、齢二つの子供にも当てはまるのか。私はリキトに食べられたい。しかしそれは賞味期限中の話だ。 私を三つにもならぬ子供が食べて、腹痛に見舞われたらどうする、高熱が出て、吐き気に襲われ、病院にでも行くはめになったら最後、リキトは二度とプリンなどを食べると言わなくなるかも知れぬ、リキトが望んでも、母上のノゾミが二度と買い与えぬかも知れぬ、ああ、私は食われたい。 子供に食われて終わりたいのだ。それが私の終わりであろうとも、美味しく笑顔で食べ終えてもらえれば、次にやってくるプリンはその糧となる、私はその礎となりて、どうかリキトの御褒美のプリンとしてその生涯を終えたいのだ。これが我儘か、それとも大それた望みか、どうか言ってくれ。元は同じ乳製品の生まれだ、チーズ、頼む、どうか、私の想いを汲んでくれ。牛乳、どうか」 プリンは頭を下げた。それはプリンとして産まれて三週間のうちで初めてのことであった。
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