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少し眠っていたらしい。首をさする。椅子に座ったまま、仮眠するのも上手くなってしまった。
母が残したメモには、売店に行くと書いてあった。
お父さんは、と見ると相変わらず。
白くなったなあと思う。
タオルケットの皺を伸ばす。
「失礼します」
そっと部屋に入ってくる人がいた。
「はい……?」
「あの、彼がこんなことになっていると聞くのが遅くなりまして、」
頭を下げたその人は
「あ、もしかして」
テーブルの上の写真を指す。
「はい。これが私で……坂本と申します」
目尻の皺が深くなった。あ、お父さんと少し似てるかも。
「この写真をずっと持っててくれたんですか」
「父の、一番の思い出でしょうから。何かそういうものが良いんじゃないかって母と話して……」
不思議な感じだった。初めて会う、父の同級生でバッテリーを組んでいた人。それがどのくらいの強い結び付きなのかわからないけれど。
「話しかけてもいいですか?彼に少し……伝えたいことがありまして」
「はい、どうぞ」
私は椅子を譲った。
坂本さんが身を寄せる
「あと五分で負ける。サイレンが鳴るぞ」
坂本さんは携帯電話を父に近づける。昔、父が持っていたような形のガラケーだ。
「お前が取らないから、打たれたじゃないかよ」
なんの事だろう、なんで責めるんだろ
冗談にしても、ちょっと
坂本さんは、振り返って私に笑顔を見せた。唇に人差し指。
電話から、音が流れた
甲子園のサイレンだ。
「う、」
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