5分後の運命

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 小型宇宙船。少女は乗り込んだ。その後を男が追う。 「やっぱり行くのか?」 「うん」 「どうしても?」  男の顔を見つめる少女の目に、迷いはなかった。男は、ふぅと息を吐く。 「じゃ、俺も行く」 「え」  男はさっと後ろに乗り込んだ。 「ちょっと、なんで?!」 「意思は固いんだろう?」 「そりゃ…」 「なら行くだけだ」  男はひょうひょうと言う。 「死ぬかもしれないんだよ?」 「死ぬ目には何度も遭ってるさ。今更、今更」  男は笑った。 「あんた、バカ?」  少女は半ば呆れ、半ば困惑気に言った。 「意思の強い女に惚れたのが、運のツキさ。せいぜいついてくよ」 「それとこれとは全然違うでしょう」 「俺にとっちゃ同じ。―行ってくれ」  宇宙船の制御コンピュータに命令を送る。 「だ、だめよ」  少女はコンピュータを止め、男を振り返った。 「あなたは降りて」  きっぱりとした口調で言い放つ。男はじっと少女を見据える。 「降りて」 「いやだ」 「降りてっ」 「自分の運命に挑戦しに行くんだろ。負ける気はないんだろ」 「…」 「手伝うよ」 「そんな…」 「言ったろ。意思の強い女に惚れたのが運のツキさ。とことん付き合うよ。―さあ、行け」  宇宙船のハッチが閉じ、エンジンの振動が始まった。  少女は男を見つめる。 「…ほんと、バカ」  男はにやっと笑う。 「運命が変われば、俺にチャンスがくるかもしれないからな。それを逃すわけには行かないさ」 「大バカ」  少女は言い放つと、くるっとシートの影に埋もれた。影になった口元が、わずかに笑っているようだった。 「言われ慣れた」  男もシートにもたれ、笑った。  宇宙船はゲートの外へ飛び出した。
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