予想外の増援

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予想外の増援

「さぁ。これでお終いですわ。我が組織の世界征服を阻む正義のヒーロー、ブレイブドラグーン」  高層ビルの立ち並ぶオフィス街にある交差点。  真夏の太陽に熱された灼熱の大地に伏す俺に、声が降りかかる。  重いヘルメットで覆われた頭を持ち上げ、仰ぎ見た俺の目に飛び込んできたのは、純白のドレスに身を包んだ金髪の少女の姿。  彼女はクリュサオラ。  世界征服を企む組織に属する怪人だ。  まるで一本一本が意思を持った線虫のように蠢いている彼女の頭髪は、クラゲの触手同様、幾千幾万に及ぶ猛毒の針を持つ。  あの髪に触れれば最後。鋭い針の数々に忽ち皮膚を貫かれ、大量の毒液が体内に流し込まれることとなる。  ――先刻両足に麻痺毒を受け、身動きが取れなくなってしまった俺のように。  後五分。  後五分で増援が来るというのに。  ここまでか――  アメーバの仮足の如く伸びる金色の髪が迫りくる。全てを諦め、瞼を閉じたその時だった。 「お待ちなさい。闇から(いで)し邪なる存在よ」  矢庭に、聞き覚えのない少女の声が俺の鼓膜を震わせた。  まさか、増援が来てくれたというのか?  いいや。そんな筈はない。最短でも後五分はかかる筈だ。  ……けれど。でも。もしかしたら。  手を硬く握りしめ、淡い希望を胸にゆっくりと目を開いていく。  外界から眩い光が差し込んでくる。  真っ暗な視界が急激に白変する。  光に目が慣れ、世界が鮮やかに色付いていく最中。  声の方へ向けた俺の目に映ったのは、 「助太刀に来てあげたわよ。なんとかドラグーン」  ママチャリに跨ったゴスロリ少女のドヤ顔であった。 「……誰?」
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