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彼女の戦い方
「で、容姿から察するに、その子が怪人かしら? 純白のドレスに、ティアラを被ったブロンドヘア――確かに奇抜な格好をしているわね。恥ずかしくないのかしら」
どこからどうみても一般人にしか見えない――が、断じて『普通の人』には見えない――ゴスロリツインテの少女が自転車を降りる。
左右一対に結ばれた漆黒の髪束が揺れて、ヘアゴムに付いた銀色の十字架が白く輝いた。
「いや、君も大概だと思うけど……」
「あら、何か言ったかしら?」
背中に掛けていたバットケースから金属バットを取り出し、にこりと微笑みかけてくる少女。細められた瞼の間から顔を覗かせるその眼は、にこやかな表情とは対照的に殺意に満ち溢れていた。
かなり小さい声で呟いたのに聞こえてたのか……とんだ地獄耳だな。
「地獄耳で悪かったわね」
「何も言ってないぞ俺は!?」
なんだこいつ、心まで読みやがった!? 超能力者か!?
……いや待て。こいつ、さてや一般人ではなくて本当に本部が寄越した増援なのでは?
それっぽい武器も持ってるし、特殊な能力も有している。
有り得なくはない……のか?
半分期待、半分疑念を込めた視線を少女に送る。
すると少女は、その幼い容貌に似合わない艶笑を浮かべて言った。
「ふふっ。泥船に乗った気持ちでいなさい」
「それあかんやつ!」
それを言うなら大船だ。泥舟は沈む。
「大丈夫よ。船頭百人分の働きをしてみせるわ」
少女はそう言いながら自転車をその場に停めると、先ほど取り出した金属バット片手にこちらへと歩み始めた。
強気な笑みを湛えたその顔の左右に座する双眸は、先程から警戒するように少女を睨み続けているクリュサオラを芯に捉えていて、少女がその心内に滾らせている戦意を窺い知れた。
どうやら本当に戦うつもりのようだ。
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