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いやああああああ!と響く悲鳴。一緒に来た彼の奥さんが半狂乱で倒れ込んでる。ザマあないわね、この女。
あ、顔の治療跡…そっか。エアバッグの怪我ね。やっぱりそうだったんだ。
…あの時。峠に車を止めて、彼は「ごめん、5分待ってて」と言い残し、アバルト695の助手席にわたしを置いて外に出た。定時連絡?と思ったのも束の間、後続車がぶつかって、崖に突き落とされた。
わたし、実は車が好きなのよ。あの赤い車、奥さんのアウディQ2よね。彼は日頃から奥さんに散々詰め寄られて、わたしが邪魔になって事故を装って…
ファーストカーの大きくて重いイヴォークだったら、落ちなかったかもしれない。今日わたしたちが小さなアバルトでデートに出かけることも、夫婦で打ち合わせ済みだったのね。名家の婿の座。財産。そうまでして守りたいものだったの?
でもね奥さん。それでもわたしは彼を愛してるの。あなたが何を企もうと、ずっと一緒にいるって約束したのよ。残念ね。
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