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その刹那、悦たちはそんな幸せな日から、真っ逆さまに、奈落の底に突き落とされたのだ。
悦が見つけたのは、まるでアキラが何かに呼ばれるかのように、4車線の大きな車道へと、おぼつかない足取りで、トコトコと歩いて、何の躊躇いもなく、飛び出して行った瞬間である。
そこへ、黒塗りのリムジンが、もの凄い勢いで走って来たのである。
俄には信じられない光景だった。
悦には全てがスローモーションになって見え、自分が嫌な汗をじわりとかくのを感じた。
りさの持っていたビードロのグラスは、するりとりさの手から落ち、歩道のインターロッキングに当たって、粉々に砕けた。
そしてアキラは一瞬、クニャッと、リムジンのフロントマスクにくっついたかと思うと、弾き飛ばされ、それから見事な弧を描いて、アスファルトの道路に叩きつけられた。
「いやあぁぁぁーー」
りさの叫び声が、辺りに響いた。
走り出していた悦は、その場で派手に転んだが、すぐに立ち上がって、なんとかアキラの元に駆け寄った。
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