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見るとアキラは鼻や耳から血を流して、意識が無かった。
なんてことだ。
全てが終わったような、最悪の気分だ。
ショックで、何をどうすればいいのか、悦は自分で考えることもできなかった。
すると、止まったリムジンの後部ドアが開いて、一人のステッキを持った老紳士が、降りて来たのである。
「大丈夫ですか?」
ハット帽を被り、太陽を背にした老紳士の顔は、逆光で悦からはよく見えなかったが、日本人じゃない。
日本語をまったく使い慣れていない感じの発音で、もっと言うなら、本当に心配しているような気持ちもこもっていない。
「大丈夫じゃないですよ!」
悦は泣きながら、そう恨み節を利かせて叫んだ。
「乗ってください」
老紳士はリムジンの開いた後部座席のドアの方へ促しながら、アキラを抱える悦に言ったのだ。
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