信号待ち

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信号待ち

今日のよう祝日でも平日でも、ビジネス街近くの映画館も入ってる商業ビル近くの大通りは、地下鉄の出入口も並びにある為、いつも人通りが多く信号待ちの時は人垣のように人が集まるようになる。 地下鉄で来れば商業ビルに近い出入口を使えるから信号待ちはしなくて済むのだが、僕の家からは地下鉄を使わないルートで来ることになるから、だいたいいつも人垣の1人として信号を待つことなる。 大通りを渡りたいタイミングで青信号だった事がないのは、僕のなんの行いが悪いのだろうか。 そんな事をぼんやり考えながらなんとなく通りの向こう側を見ていたら、知ってる人は不思議と遠目でもなんとなく分かるもので、これからひと月ぶりにデートをする彼女がいる事が分かった。 信号が青になるのが待ち遠しい。 そわそわしながら、気づけ気づけ、僕に気づけと彼女に念を送ってみても人垣の1人として信号を待っている僕の事は見えていないようで、僕の事を探す素振りもなく誰かと話しているようだ。 え、待て、誰と? 誰と話しているんだ? これから僕とデートのはずだろ。 てか、待ち合わせ場所もそこじゃないよな? 商業ビルの中の本屋で待ち合わせだろ。 僕が遅刻する事が多いから。 そういえば、信号待ちにしては横断歩道からは半端に離れているし、なんで地下鉄寄りにいるんだ? だから彼女の事が見えたんだけど、彼女も地下鉄には乗らずにここに来られるはずだ。 もう少しで信号が変わる。 早く会いたくてそわそわしていた気持ちが、緊張と汗で硬いものに変わっていく。 まだ誰と話しているのかは分からないが、ただ道を聞かれているだけであってくれと願いながら人の流れに乗って横断歩道を歩く。 横断歩道を渡りきる前に彼女が誰と話しているのか分かった。 前に1度会った事がある。 待ち合わせに遅刻しそうになって、5分か10分くらい遅れると彼女に連絡したけど、電車の乗り継ぎがなぜかスムーズにいって遅刻せずに行けた時、彼女といた奴だ。 大学の時の先輩だという事は聞いた。 地下鉄で何駅かいった所に住んでる事も聞いた。 生活圏内で便利だからよく来ていて偶然会って驚いていた所だという事も聞いた。 誤解のないようにとも言われた。 今日も偶然会ったのだろうか、それとも会おうとして会ったのだろうか。 僕とデートの約束をしているのに。 僕は遠くからでも彼女の事が分かったけど、2人は僕に気付くだろうか。 横断歩道を渡りきって右に少し歩けば2人の横を通りすぎる。 商業ビルにもすぐ着くし、待ち合わせ場所にしてる本屋にもあと5分もすれば着くだろう。 この後どうなるのか何も分からないけど。
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