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いつものカフェでレモンティを頼む。
土曜日の午後3時、そこにはすでに一人の男性が座って死にかけていた。
「生きてますか?」
「死んでる」
訂正、一人の男性が座って死んでいた。
肩にかけていた邪魔な矢筒をテーブルに立てかける。
「お疲れ様です」
「やめた」
テーブルには、ホットでブラックなコーヒーが湯気を出している。
死体はテーブルに顔を伏せながら、目でチョコレートなタルトを指す。
どうも、熊は冬眠したいらしい。
「やる」
「え?」
「それ」
「寝る」
えっと
「うん」
「4時に起こして」
「おやすみ」
熱いコーヒーを冷ましながら、熊は夢の中に旅立つ。
今日は珍しく山の向こうに入り口が見える。
ジャケットくらい脱げばいいのに。
まあ、ありがたくおやつはいただきます。
「おいしい」
向かい側の席のPCと紙の束がぱんぱんに詰まったバッグを見ながら、のどかなティータイムを過ごしてみたりする。
一応、英語のノートも開いた。
「帰ればいいのに」
目の前の天然パーマに手が届くのはたぶん今日だけ。
窓から夕日が差し込む。
今何秒だろう。
そっと手を伸ばした。
「ん?ああ」
「いえ、おはようございます。」
レモンティは思ったより酸っぱかった。
冷めたコーヒーを飲み干して外に出る。
くねくねして奇声を発しながら熊が人間に戻っていく。
「えらいわー」
「えらいえらい」
絶賛実習期間中だそうで、これからどこに行くつもりなんだか。
大きなあくびをしながら手を振る。
結局、今日も原付にまたがった後ろ姿を見つめるしかできなかった。
おかしいな、まだ1つも数えてないのに。
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