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「先に好きな子作られて、別れ話されて、そんなのずるいって思ったんだよね……」
それだけのことでしかないとわかっているのに、話しながら涙が出てきた。隣の智は静かにため息をつく。
「……ばぁか。泣くほどくやしかったなら、引っぱたくくらいして帰ってこいよ」
「そんなんじゃ」
「好きじゃないやつでも、フラれたらくやしいもんだろ」
「……」
一瞬違うと思ったのに、続けられた智の言葉が心の底にすとんと落ちた。
「俺からすれば、あいつのこと選んでなかったお前が、あいつに選ばれなかったことをどうこう言う権利はないと思うけど。まあ、女心は複雑だよな」
「智のくせにめっちゃ整理する……そっか、アタシ選ばれなかったのか。だから腹が立ったのかぁ。なんでだろ? なんでアタシじゃだめだったのかな……」
「だからさ、それはお前が選んでなかったからだよ」
「腹立つなあ……けっこうな回数、エッチまでしたのに」
「ぶっ」
智はコーヒー缶を落としそうになっていた。勢いとはいえ、幼なじみにする話ではなかっただろうか。
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