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智はそっと玄関の陰から外の様子をうかがった。
「……だれか外から入ったみたいだけど」
「えっ」
とりあえずそこにはだれもいないことがわかったので、智を追い越して門扉からシャッターと扉の様子を見た。
「中、ちゃんと鍵かかってる?」
「そのはずだよ」
「確かめに行こう」
勇敢な智はいま来たルートを引き返し、アタシが出てきた勝手口からそっと家に入る。子どものころから智は表からも裏からもうちに入り放題なので慣れた様子だ。
「ちょっと、おかーさん降りてきたらどうすんの」
「駐車場からだれか来るほうがこわいだろ」
言われてみれば。
この間見たホラー映画で、最初の犠牲者が駐車場で逃げ回った末惨殺されていた場面を思い出した。
「かかか、鍵の確認するだけでも、意味はある」
「だろ」
あの映画は智の家で見た。彼の頭にもおそらく同じ光景が浮かんでいるのだろう。
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