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智はアタシの肩をつかみ、ドアから離れる。そのまま勝手口の外まで連れ出された。
おかーさんたちから少しでも離れた場所に行きたかったのは、アタシも智も同じだった。
呼吸ができなくなっていることを自覚し、アタシはしゃくり上げるように高い声を漏らす。
「落ちつけ」
智はアタシの手をつかみ、苦しさを和らげようとしてくれる。
「いつからっ、……なん、で……」
「わかんないよ、そんなの」
智の声もわずかにふるえていた。
「なんでっ、おかーさんが、智のおとーさんと……」
「わかんないって」
「うそだぁ……だれか、うそだと言って……」
「そんなセリフ、マジで言うことあるんだな」
智の感想に、完全に同意した。こんなこと、ドラマや映画でしか言わないものだと思っていた。
ぼろぼろと涙がこぼれてくる。
「自分の親に裏切られるって、こんな気分なんだ……」
「裏切ったわけじゃないだろ……べつに」
「だって、結婚してるのに。智のおとーさんだって」
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