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「……親だって人間だし。親だからって、俺らの望む人間である必要なんてない」
「なんでそんな冷静なの」
「冷静じゃねーよ」
らしくなく智の言葉遣いが少し荒れて、彼の苛立ちに気づいた。
「いまでも迷ってる。あそこに乗り込んでいって、父さんをぶん殴るべきかどうか」
「えっ、じゃあ行こうよ。アタシだっておかーさんを」
「やってどうする」
アタシの怒りと焦りを、智の声が上からはたき落とす。
「……乗り込んで、罰を与えて。お前の父さんと、俺の母さんに告げ口するのか」
「そうだよ」
「そのあとどうするんだよ」
「え……」
視界をゆがませる涙の向こうで、智も泣きそうな顔をしていた。
「離婚させるか? 両方の親を?」
「離婚って……ええと」
ただでさえ混乱している頭の中で、情報が渋滞する。
「それで、俺の父さんとお前の母さんを結婚させる?」
「急にそんなこと言われても」
「俺はいやだね。駐車場でいちゃついてるふたりはそれでもいいかも知れないけど、俺は母さんが泣くところなんて、見たくない」
「……あ」
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