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「お前や乙音と家族ごっこだってしたくない。家族は、俺の家に住んでる人間だけだ」
びっくりして、涙が止まった。
感情に任せてあの場に乗り込んでいって、そのあと家族が壊れることの意味をアタシはまったく理解していなかった。
おかーさんと彼のおとーさんがそれぞれ離婚してから結婚する、なんてまったく現実的じゃない。
智の言うとおりだ。おかーさんがだれとどうしていようと、うちの家族だって、うちに住んでる人間だけなのだ。
「でも、じゃあ、どうしたらいいの」
「俺に訊くなよ。……もちろん親にも訊くなよ」
「このさ、吐き気みたいな」
「フラれた痛みに勝ったんならよかったじゃないか」
「あ」
そうだ。アタシは今日、彼氏にフラれたばかりなのだ。
さっきまでべそをかいて智に話を聞いてもらっていたのに、いまはおかーさんのことで頭がいっぱいだ。
そして、胃だけでなく頭もなんかジリジリして熱いし痛い。
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