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「お前には難しいかも知れないけど……ちょっとハラにおさめて、様子見よう」
「子ども扱いしないでよ」
反論してみるが、正直あまり自信がなかった。
智にこう言われなければ、あとで家の中に戻ってきたお母さんの顔を見た瞬間、聞いてしまうかも知れなかった。
「智のおとーさんと、なにしてたの?」と。
いままでいかに自分がなにも考えずに、言いたいことをそのまま口にしてきたのだろうと思った。
アタシが言いたいことを言ったとき、相手の顔が曇ることがよくある。智も乙音も例に漏れず。
今日別れた彼氏のことを、ふと考える。あいつがまぶしそうに見つめていた女の子のことを。
直接話したことはあまりなかったが、彼女を知る人はだれも彼女の悪口を口にしなかった。なにも考えずに見ればアタシだって「いい子じゃん」と思うようなタイプ。
だから、選ばれなかったのだろうか。アタシは。
彼女は言わないのだろうか、相手の顔を曇らせてしまうようなことを。
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