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くらべたって、あと出しの結果論に意味なんてないのはわかっている。
それでも、なにか理由が欲しかった。
アタシのちっぽけなプライドが削られたぶんの埋め合わせになるような、圧倒的な理由を。自分ではもうどうしようもないと納得できるような理由を。
考えていたら、おかーさんのショックが少しだけ和らいだ気がした。
こうして単純な自分を思い知ることが、いちばんの逃避なのかも知れなかった。
「おい、俺のコーヒーどこやったの」
「あ……いっけね。キッチンに置いてきた」
「バカ。どこから持ってきたんだって言われるぞ。持ってこい、俺が捨ててくる」
どこまで神経質なやつなんだろう、と思ったが口に出すのはやめておいた。
ほぼ空いている2缶を持ってきて智に渡すと、彼はじっとアタシを見た。
「なに?」
「いや。……お前、ほんとに黙ってろよ。お前んちだけの問題じゃないんだからな」
「わかった」
言われるまでそれを考えもしなかったことも、黙っておくことにした。
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