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その頃乙音は中学生になり、新しくできた友達の影響で読む本をマンガから小説に乗りかえていた。
いいな、中学生って暇そうで。
それがアタシの感想だった。
「凛音ちゃん、運命ってあると思う?」
乙音はお気に入りの小説本を胸に抱え、アタシの部屋をのぞき込んできた。
「は? なに、急に」
「読んだ本にね、書いてあったの。ほんとうの恋の相手って、生まれる前から赤い糸でつながっているんだって。それを運命の恋人っていうんだって」
「はあ……あんたもそのテの話に心ときめく年頃になったのか」
言いながら、自分がとんでもなくババアになってしまったような気がした。
3年になってからというもの、世界が変わってしまって困る。1年や2年を見て「若いな」と苦笑が漏れてしまうのだ。
「あるって言うほど夢見がちじゃないし、ないって言い切れるほど世間を知ってるわけでもないのよ、アタシ」
「……? よくわかんないけど」
「あるって思ってる人間のところにはあるんじゃないの」
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