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「おい、凛音」
智のかすれたボーイソプラノに咎めるように呼ばれ、なにを言われるのか察し眉根を寄せた。
「なにさ」
「お前んとこのチビ、またうちに来てるんだけど」
「あっそ」
「あっそ、じゃねーんだよ。お前の妹だろ。ちゃんとお前んちで面倒見てろよ」
やっぱりか、と思い肩を落とす。
「うちのおかーさんもあんたのおかーさんもおばーちゃんも、なにも言ってないじゃん。どうしてアタシに言うのさ」
アタシの妹である乙音は、最近斯波さんの家で飼っているチワワにご執心なのだ。
幼稚園から帰るなり、制服を着替えもせず通っているのはご近所でも有名な話になりつつある。
ひとりっ子の智からすると、扱いかたのわからない小さな女の子が自分の家でチワワと戯れているのが気に入らないらしい。
「……お前、ちょっと、注意しろよ。言えるだろ、それくらい」
「だから智が言いなよ」
「相手はでっかい女3人だぞ。俺が言って聞くと思う?」
「思わなーい」
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