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「え? それってどういうこと? 凛音ちゃん最近むずかしいことばっかり言うから」
「自分以外の人間が考えてることなんてそうそうわかんないもんよ、妹よ」
アタシは目の前で純粋に目を輝かせる妹をまぶしく感じていることを自覚する。
乙音なら、他人の気持ちなんてわかんないなりに思いやり、思いやられてもいくのだろうと思ったのだ。アタシはそれをうらやましく思った。
かといって、乙音になり代わりたいなどとは微塵も思わないが。
「凛音ちゃんがなにを考えているのかわからないけど……でも、凛音ちゃんにもきっとあるよ」
「そうかね」
ないない、と即答しそうになったのをとっさにこらえた。
アタシの中に横たわるなにか乾ききったものを、わざわざ妹に伝染してやることはないのだ。
ただ、ピュアなうちの妹が真っすぐにそのまま生きられる場所を選んで歩いていけますようにと、そんなことを思う。
なんだ、アタシってけっこういいヤツなのかも知れない。
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