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「だってアタシ、あんたの女関係とかどうでもいいもん」
「一度はつき合ったことある男にそういう感じ出す?」
間延びした話しかたに、だらしなさを感じた。
フラれたときは悔しくて泣いたりしたけど、別れて正解だったかも知れない。こういうヤツといっしょにいて楽しいなんて思っていた自分なんて、長く続けるものじゃない。
人間は黙ってそのままにしておけば、勝手に大人になるものではないと思うし。
靴を履き替えながら、元彼に背を向ける。
「どうでもいいとか言わないでよ~。さみし」
「知らないってば。元カノにまとわりつくとか、彼女に誤解されても知らないよ」
「……んー。それが。誤解されてもいいかなって」
やけにしんみりした声が投げかけられて、なんとなく振り返った。
声色とは裏腹に、元彼は媚びた目のまま口角を上げてアタシを見ている。
「昔をさ、ちょっと、……思い出してみない?」
その目と言葉の意味を悟り、上履きを投げるように戻した。
「アホなの? くっだらない」
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