やさしくなりたい

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  「そんなこと言うなよ、知らない仲じゃないだろ」 「知らない。忘れた、そんなこと」 「ええー、俺は覚えてるよ。オマエの右ももの内側にあるほく……げふ」  もう一度振り返りざま、元彼の腹にカバンをぶつけてやった 「アンタ最低。そんなの口に出してなにがしたいのさ」  周りの関係ない人たちに聞かれるのはいやで、声をひそめた。 「イテテ、悪かった、悪かったよ」  元彼は腹をさすりながら、アタシのあとをついてくる。 「ついてこないで」 「ごめんて。でも聞いてよ」 「くだらない男のくだらない話なんて、聞く義理ないから」 「彼女がさ、冷たいんだよ」 「知らないってば」 「もう1年くらいつき合ってるのに、ぜんぜんやらせてくれなくて」 「……」  ますます最低だ。 .
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