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「気分、悪くて。なにかに叩きつけなきゃ気が済まないことだってあるじゃん。目の前にどうでもいい相手がいたら利用したくもなるじゃん」
「……」
智の目が、アタシを哀れんだ。こいつとことんバカだな、って思っているのが伝わる。
「やらかす前に、どうやって気持ちの整理なんかするのさ。事件は現場で起きてるんだから」
「なんだそれ。なんか映画でも観たか」
「……。好きな人との経験でもあれば、自分がもったいないとか相手がくだらないとかわかるんだろうけど。アタシそんなの知らないもん」
足元に小石を見つけて、こつんと蹴飛ばした。小石は近くの茂みの下に転がり込み、見えなくなってしまった。
智は眉根を寄せ、ハァとため息をつく。
「知りたいのか」
「え?」
「……まともなコト、知りたいのか」
「え……あ、うん……」
智がなにを言っているのかよくわからずうなずいた。
しばらく地面を見つめたあと、智はなにか決意したように顔を上げる。
「俺もいろいろで、ちょっとむしゃくしゃしてる。当たってもいいか」
「え、待って。なに、こわいんだけど!?」
「当たりついでに、まともな恋人同士がどんなコトするか、俺がついでに教えてやる」
「智!?」
急に手をつかまれて、驚いた。
智の手って、こんなに大きかったっけ。
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