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だんだんさめていくベッドの上が気まずくて、下着と服を引き寄せシーツの中で身につけた。
「飲む?」
すべて着終えた頃、智は抑揚のない声でもうひとつのマグカップを差し出す。
ありがとうと言って受け取り、さめてきた体を甘いカフェオレであたためた。
──智はアタシを抱いている間だけほんとうにカレシのようで、男って大事な女にはこんなふうに触れるものなのか、なんて思ったりした。
こんな大事なこと、間違えてから知るなんて。
「ねえ、智」
「なに」
「……こういうコトしても、アタシのこと、まだ幼なじみって思ってくれる?」
智はアタシにとって幼なじみでしかなくて、それ以上にもそれ以下にもしたくなかったのだ。
それ以上など望んでいない。アタシは智を愛してないし、智だってアタシを愛してなどいないだろう。
だからと言ってそれ以下にしてしまうのは、もっと望んでいなかった。
アタシは幼なじみとしての智を手放せないと思ったのだ。
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