やさしくなりたい

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   智はなんの感情も感じられない黒い瞳をアタシに向けた。それにほっとしたなんて言ったら、彼は笑うだろうか。 「幼なじみじゃなきゃ、なんなんだよ。……今日は、ひどい当たりかたして悪かった」  表情は変わらないが、少し沈んだ声がいかにも智だった。  智とのセックスはとてもよかった。  意外に熱くなる肌は心地よかったし、腕の強さも好みだった。アタシたちの間になんのしがらみがなければ、何度でもしてみたいくらいには。  でも、欲望に流されたくはなかった。男と女の欲望に名前をつければ、いつか終わる関係になってしまう。  要するにアタシたちは本気の“間違い”を犯したのだ。親のせいに、周りのせいにして。  明日もそのずっと先も、またこんな間違いをするかはわからない。だが今日限りにしなくてはならない間違いだ。  自分の中でぐるりと理屈をこねくり回しながら、ふとやわらかい髪を思い出す。 「……乙音にはこんなコト言えないな」  ぽつりと漏らすと、智はチッと小さな舌打ちをした。 .
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