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気づけば乙音の部屋にどんどん本が増えている。最初は友達の影響だったはずだが、読書は趣味として合っていたのだろう。
アタシはあまり本を読んだりしないのでよくわからないが、乙音は最初お気に入りの漫画家が表紙を担当している少女小説をランダムに買っていたようだ。
だが買って読んでいくうちに好みがあるとわかったのかやがて作家を選び、そして枝葉を伸ばすように複数のレーベルを買うようになっていった。
学校から帰ってくると、乙音はリビングのソファの上で本を抱えていることが多く、その姿はいやでも目についた。
「ねえ、こういうのってなにがいいの」
本に興味はなかったが、妹がそんなに熱中するものはどんなもんか、という疑問はある。
口に出した瞬間、漫画を読むことはあっても自分から進んで字のかたまりを視界に入れる気のない自分に気づいた。
「なにがって……ふつうに面白いから」
しぱしぱ、と小さな可愛らしい音がしそうなまばたきをしながら乙音はきょとんとアタシを見上げる。
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